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自動車メーカーはデータ会社になる決心を迫られている

Amazon(アマゾン)のジェフ・ベゾス(Jeff Bezos)氏が数十億ドルを蓄え、Apple(アップル)が私たちの文化を変え、Google(グーグル)は広く行き渡り、そしてソフトウエアが世界を食べている一方で、自動車業界は救済措置を必要としていた。その後、業界は多かれ少なかれ回復して来たものの、もはや彼らは米国の産業を代表する巨人たちではなくなっている。その巨人の称号は現在、データをやり取りする会社たちのものであり、私たちを動かしている脈拍の上に、世界の大規模テック企業たちがそのデジタルの指を置いて脈を測っているのだ。

しかし、古い自動車の巨人たちの希望が、全て失われてしまったわけではない。運転手が乗っていようがいまいが、自動車は目の前に存在している。自動車メーカーたちは、デジタル時代により適した戦略を実行し、データを将来のビジネスの中核部分とすることで、確実にテーブルに着席する権利を得ることができる。

大きなチャンス

「ビッグデータ」は聞き飽きたフレーズだが、データブームは本格化している。LyftやUberのような新しいモビリティの巨人たちは、データの上に成り立っている。サムスン(Harmanを買収)、インテル(Mobileyeを買収)、Google(MapsおよびWaymoを所有)、そしてApple(MapsおよびTitanを所有)といった、既存のデータならびに技術中心の企業が、モビリティ製品を開発している。輸送ならびに移動分野の規模を考えれば、こうした動きは完全に理にかなっている。

世界中で、12億台もの車両が運行しており、人びとは毎年のべ23兆マイル(37兆km)の移動を行っている。2020年までには、地球上の各人が1秒間に推定1.7MBのデータを生み出すと予想されている。またAAA(米国自動車協会)の2016年の報告によれば、米国人は毎年平均1万7600分(約12.2日)を運転に費やしている。こうした見積もりによれば、米国人は自身の車から、毎年1.8TBのデータを生成するとされている。自動車にカメラ、レーダー、ライダー(LIDAR)などのセンサーを追加し、こうした自動車をクラウドに接続したみたらどうだろう。インテルによる、自動運転車は1時間半の走行で4TBのデータを生成するという主張も、馬鹿げたものとは思えなくなってくる。マッキンゼーは、車が生成するデータの価値は、2030年までには7500億ドルにも達すると考えている。どちらの数字も大雑把すぎるものではあるが、メッセージは明白だ。そこには大きなチャンスが横たわっているということである。

データを必要とするのは誰か?

すべてのデータが同じように生成されているわけではなく、さまざまなデータ顧客が、自身のサービスを強化し拡張するために、さまざまなデータポイントを求めている。自動車メーカー自身と販売店は、顧客が自社製品をどのように使用しているかをよりよく理解するために、生産後も車両を追跡したいと考えている。彼らはこのデータを使って自社製品を改善し、保守と修理のために顧客を販売店へ向かわせ、究極的には顧客にとっての長期的な価値を高めることができる。

電気通信会社は、車載Wi-Fiとデータサービスを提供し、最終的には自動車をインターネットに接続するために5Gネットワークを拡張しようとしている。修理工場は、車の診断だけでなく、メンテナンスや修理の予測さえも可能にするために、車両のセンサーやシステムに遠隔的にアクセスしたいと考えている。都市計画担当者、広告主、そしてヘッジファンドは、個人の嗜好の全体像を把握するために、個々人がなぜ、どのように移動しているのかをの情報を提供する、ロケーションベースの分析にアクセスしたいと思っている。

保険会社は、個々のユーザーに対するより正確な保険料の見積もりや、使用量ベースの保険を提供するために、スピード、加速、そしてナビゲーションデータへのアクセスを望んでいる。開発者は、私たちがまだ想像していない新製品やサービスを開発するために、車両データへのアクセスを望んでいる。このリストは果てしなく続いていく。

こうしたデータ顧客たちは、自動車メーカー自身よりも、車両データに関する高度な戦略を持っており、車両データを収集して集計しようとしている多くのスタートアップと提携している。たとえば、多くのスタートアップが、保険会社や修理工場と提携して、自動車の車載診断(OBD)ポートに差し込むハードウェアを提供している。とはいえ、OBDが提供するのは全車両データのごく一部に過ぎない。

データを持っているのは誰か?

こうした「外部からの工夫」にもかかわらず、車両固有の最も豊富なデータセットはCANBUS上に記録されており、そのデータに最も簡単にアクセスできるのは自動車メーカー自身なのである。つまり自動車メーカーは、誰がどのようにデータを利用できるのかを決定する際に、最も有利な位置にいるのだ。

BMWのような大手自動車メーカーが、大手テクノロジー企業にコントロールを握られたくないと考えていることは既にわかっている。では、他の選択肢は何だろうか?データの管理と収益化は、これまで自動車産業の中核能力ではなかった。製造業者と供給業者は、現在7年の製品サイクルで活動を行っている。このことは安定したバリューチェーンに対する完全な制御を得ることを可能にするものの、引き換えに、エンドユーザーとのやりとりや、最先端のデジタル能力は犠牲にされている。特に1世紀を超える伝統を誇る高級ブランドでは、プライバシーとセキュリティの問題が浮上している。自動車メーカーたちにとって鍵となるのは、市場での独占的な地位を譲ることなく、データの専門知識にアクセスする方法を見つけることだ。

小規模の自動車メーカーは、ADAS(Advanced Driver-Assistance Systems、先進運転支援システム)、すなわち自律性およびデータ管理ソリューションを提供するテクノロジー企業(Aurora、Waymoなど)に、ある程度のポジションを譲っても構わないだろう。なぜならそうしたものを自社で開発することは困難だからだ。このポジションを譲渡することで、そうした自動車メーカーは業界内での自身の地位を下げることになるが、将来的には大きなものとして返ってくることになるだろう。たとえば、Waymoはクライスラーとジャガーの車両のために、技術一揃いを開発している。

この見通しに困惑している自動車メーカーは、自動運転技術のためにArgo AIやCruiseに対して行ったように、買収を検討したいと思うかもしれない。たとえばFordは、社内開発能力を獲得するためにTransLocとAutonomicを買収した。ゼネラルモーターズは、サードパーティデータプラットフォームであるWejoに、大きな投資を行った。もちろん自動車メーカーは、こうした機能を自分自身で開発しようと試みることもできる。トヨタは10億ドルのデータセンターを構築中だ。

次は何か?

私たちAutotech Venturesの中では、車両データから取り込むべき多くの価値があることが、十分かつ明白に認識されている。その価値は、多くのセンサーが車両に追加されるにつれてますます増加する一方だ。自動車メーカーはこの価値の莫大なシェアを獲得できる最高の立場にいるが、迅速に動いて、おそらくその途上で優先順位を再編成する必要があるだろう。だが私たちは、彼らが自分自身でそれを成し遂げられるかどうかには懐疑的だ。

自動車メーカーがハイテク企業組むにせよ、専門知識を得るためにスタートアップを買収するにせよ、またはデータ管理のニーズを満たすためにスタートアップに頼るにせよ、私たちは程なくこの分野で多くの動きを見ることになるだろう。

【編集部注】著者のジェフ・ピータース(Jeff Peters)博士は、 Autotech Venturesのプリンシパルであり、交通関連スタートアップに投資している。彼は交通産業、最適化、自動運転、そしてAIに関する、学術ならびにメディア記事を発表している。

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画像クレジット: Catherine MacBride

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(翻訳:sako)

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ファンクラブ作成アプリの「CHIP」がクローズへ

「スマホアプリから誰でも簡単にファンクラブを作れるサービス」として、2018年8月のローンチ直後から何度か紹介してきた「CHIP」。同サービスが明日5月25日をもって提供終了となる。

運営元のRinacitaではすでに先日サービスのクローズを発表済み。25日の13時にファンクラブへの新規加入やコンテンツの閲覧・投稿など全てのファンクラブ機能を終了する予定。6月7日にアプリの運用を停止するとともに、申請された売上金の振込をするとしている。

上述した通りCHIPはスマホからファンクラブをサクッと作れるアプリ。ファンクラブ名やテーマ画像、説明文などいくつかの項目を設定するだけでいいという手軽さがウリで、簡単なものであれば2〜3分で作成できる。

設定した月額会員費の90%がアーティストに還元され、10%がCHIPの収益となる仕組み。リリースから約3ヶ月で約2600個のファンクラブが生まれ、ユーザー数も2万人を突破。具体的な数字については非公開とのことだけれど、2019年4月末時点ではユーザー数は4万人を超え、1000万円以上の金額をアーティストに支援することができたという。

クローズの背景についてはRinacita代表取締役の小澤昂大氏が自身のnoteで言及しているが、大きくは以下の3つがポイントになったそうだ。

  • (特に支援するファン側のユーザーに対する)課題設定が甘かったこと
  • 「あらゆる人が夢に向かって挑戦できるサービス」という本来の目的からズレが生じてしまったこと
  • 課題を再定義した際に、CHIPを軌道修正するよりも新規のプロダクトを開発した方が良いと判断したこと

小澤氏に話を聞いたところ3月にはアプリのアップデートを始め、Android版の開発や人気クリエイターとのタッグ、プロモーションの強化に向けた計画も進んでいたそう。シリーズAの資金調達なども検討する中で一度方向性を深く整理した結果、上記の理由からクローズを決断したという。

「個人としても思い入れのあるサービスであり、毎日のように使ってくれるクリエイターの方や投稿を楽しみにしてくれてるファンの方もいて、潰したくないという気持ちも強かった。最後までできれば残したいという思いはありましたが、中途半端に続けるのはユーザーさんにとっても良くないと考え、クローズを決めました」(小澤氏)

Rinacitaでは今後CHIPとは別の形で“個人を後押しするような”サービスを開発していく計画だ。